勇気のある見積もり

ソフトウェア開発において、見積もりはまさに鬼門である。目に見えないものを見積もるので、多分の考慮漏れが発生する。これが、進捗の遅延につながり、プロジェクト運営を困難にする。多くのリーダーは、目に見えない見積もりを半ば諦め、悠長なスケジュールを出せば、首を切られるとばかりに恐れ、提示されたスケジュールに合う形で、見積もりを行ってしまう。ここに、人間の弱さを感じる。それが、プロジェクト運営上の、諸悪の根源であるにもかかわらず。


リーダーは、作業の洗い出しに全力を挙げ、且つ必ずリスクを考慮して、見積もりを行うべきである。それが、大線表から、大きく外れているとしても、チームが本来のよい仕事をするために必要であることを強く信じ、リーダーは、勇気を持って、提示するべきである。リスクを、考慮しないスケジュールを、誰が信じるだろうか。ソフトウェアは、リスクの塊である。


スケジュールは、少なく見積もってから補正をかけるより、多めに見積もったほうが補正を利かせやすい。それは、大線表は、個々のスケジュールから成り立っているため、それらが全て狂ってしまうためである。こんな考え方もある。間に合わないときには、矢のような非難を浴びるが、早めに終わってしまったなら、誰も文句は言わない。新たな作戦を展開することも可能かもしれないし、余った時間を、他の有意義な時間に、割り当てることが出来る。


リーダーは、エンジニアの創造的な開発のため、如いてはプロジェクトのためと強く信じ、勇気ある現実的な見積もりを行うことを強く訴えたい。


vol.28

見積りの手法は、類推法やFP法、WBS積上げなど様々存在しますが、そのような手法以前に、どうしてもビジネサイドから提示された要求線表に強く影響を受けてしまうことに問題があります。ステークホルダーに対するおべっかなのか、日本人の人情がそうさせるのか、見積もることをあきらめているのか、どうなのか分かりませんが、どうしても理想の線表に合わせてしまいがちです。

スケジュールは、プロジェクトにおける一つの戦略図です。プロジェクトメンバーがスケジュールを見たときに納得できるものでなければ、その後のチームのパフォーマンスは維持できません。その意味でも、スケジュールはひとつのプロマネの意思表明の場なのだと思います。